現在、日本酒専門店が増え、蔵元や地酒特集を組む雑誌・WEBメディアも増加し、ちょっとした日本酒ブームが巻き起こっています。
そんな中、人気コンテンツのひとつになっているのが“日本酒と料理の組み合わせ”。ここ数年、日本酒業界でも【マリアージュ(mariage)】という言葉が浸透してきました。
「マリアージュ」とはもともとワイン用語で、“異なる味わいのワインと料理が重なり、第3の味わいが新たに生まれる”ことを指します。そしてもう一つ、最近注目されているのが【ペアリング(pairing)】。“お酒と相性の良い料理との組み合わせ”を言います。
マリアージュとペアリング、それぞれ言葉の意味は少し違ってきますが、どちらも料理とお酒の組み合わせを指す言葉。いずれベースとなるのは“お酒と料理を組み合わせる事で美味しくなる”ことがポイント。その“組み合わせ方”にはちょっとしたコツがあり、日本酒初心者でも実践しやすいマッチング方をご紹介したいと思います。
①【濃淡】お酒と料理のボリュームを合わせる
濃い味わいには濃いお酒、素材の味わいを楽しむようなシンプルな料理にはさっぱりお酒という風に味の濃淡を合わせる。料理とお酒のトーンを合わせることで、心地よいバランスが生まれる組み合わせ。
②【香味】同じニュアンスの香味を合わせる
香りや味の要素が似ているものを組み合わせる。フルーティーな素材が多い料理には吟醸酒系のような香りを楽しむお酒を、甘酸っぱい味わいに甘酸っぱいお酒など、同じ要素を重ねる組み合わせ。
③【温感】お酒と料理の温度帯を合わせる
日本酒は冷・燗、どんな温度帯でも楽しむことができるのが大きな魅力ですが、料理に合わせて温度を変えることで、美味しさが大きくアップする。温かい料理には温かいお酒を、冷たい料理には冷やしたお酒を…をひとつの目安にすると合わせやすい。
以上、3つのポイントにまとめてみました。…とはいえ、上に挙げた組み合わせのポイントはひとつの指針です。香りや味の感じ方は人それぞれ。好みも十人十色で、正解というものはありません。
元来、日本酒は“食中酒”として最適な飲み物。私が暮らす宮城県の日本酒はすっきりした味わいのお酒が多く、料理との相性が抜群です。食に寄り添う・料理を引き立てる食中酒に主眼を置く蔵も多く、食との相性を意識した酒質設計をされる蔵元が多い現状にあります。
参考までに、私が日本酒を嗜むようになって20年とちょっと…(あ 歳がバレますね。笑)過去には、劇的に美味しく感動のあまり涙が出てしまった組み合わせがいくつかありました。中でも最も忘れられないマリアージュ体験は2010年。場所は仙台市内のイタリアンリストランテ「パドリーノ・デル・ショーザン」でした。
この<勝山 元>と<ニョッキのブルーチーズ>の組み合わせは今でも忘れられません!“蜂蜜酒”と呼ばれる<勝山 元>のトロリと農熟したバナナのような香りと貴腐ワインのような甘味に、ブルーチーズがピタッと寄り添い、呼応しながら新しい旨味に昇華していく…その一連のプロセスに鳥肌がたちました。
その衝撃度合を表現すると、こうです。
「口に含み口内調理された途端、体内に衝撃が走り、脳内のボタンがピッと押されて打ち上げ花火がパァーンと上がり、頭上30メートルのくず玉に命中し、パッカーンと割れたような衝撃!!!(説明長い!!でも 実体験です!)」
近年は日本酒がどんどん多様化しています。果実を思わせる香りの高い吟醸酒やフレッシュな生酒、酸が高めのお酒、濃厚な無濾過中原酒やにごり酒、スパークリング酒など、まさに百花繚乱の時代。だからこそお酒と料理のマッチングのコツを知って、もっともっと日本酒ライフを満喫しましょう。
“楽しみ方のコツ”を知って、相性の良い組み合わせを探求したり、意外な組み合わせを発見してみたり、もっと自由に日本酒ライフを楽しんでいただけたら嬉しく思います。
◆プロフィール
早坂 久美(はやさか くみ)/プランニングルーム エムピー
大手印刷会社にて、15年間食品をメインにした企画業務に携わり、2001年フリーに。食プランニングのスキルをベースに、フードコーディネーターと唎き酒師、日本酒学講師の資格を生かした活動をしています。
フードプランナー(宮城県6次産業化プランナー登録)/唎き酒師・日本酒学講師(SSI認定No.161)/フードコーディネーター3級/みやぎグリーン・ツーリズムアドバイザー
※活動内容の詳細はこちらから
http://mp-room.com/