福島県須賀川市にある苺農家『おざわ農園』にて、こだわりの苺を使ったフルコースが楽しめるランチツアーに参加してきました。おいしい苺を作るために様々な工夫がなされた苺ハウスの見学と、レストランカーで準備された苺の創作料理がハウスの中で楽しめるこのツアーは苺について学び、苺の新たな美味しさを発見できる充実の内容でした。腕を振るうのは郡山の名店『ベストテーブル』の芹沢シェフです。
当日はJR郡山駅バスターミナルに集合し、そこから中型のバスに乗り込み、おざわ農園へ向かいました。郡山から須賀川市にあるおざわ農園までは40分程度。建物群を抜けると、のどかな風景が広がります。 バスに乗り込む際に除菌スプレーで手指消毒するほか、2名がけのシートに1名のみ座るといったコロナ対策が行われていました。 また座席には一人一人に除菌スプレーとウェットティッシュが設置されており、ツアー中に使用するほか、持ち帰ることできるようになっていました。ニューノーマルな時代の心遣いが嬉しいですね。
おざわ農園に到着すると、ユキヤナギの木々が美しく紅葉していました。たまたま前日に霜がおり、一気に色づいたようです。案内されたハウスの中には真っ白なテーブルクロスのかかった大きな長いテーブルが二つ、手前にはドリンクを提供するスペースがあります。当日は快晴。ハウスの中はポカポカと暖かく、天井から透けて見える青空の色がとてもきれいでした。 整然と並ぶ、カトラリーや装飾はまるで高級なレストランのようでした。席に着くと、すぐにウエルカムドリンクが提供されます。おざわ農園さんの苺で作った苺ドリンクはアルコールとノンアルコールを選ぶことができます。甘酸っぱい苺ドリンクを飲みながら、おざわ農園の小沢充博さんから苺のお話を聞きます。今年は生育が遅く、ツアー開催までにたくさんのご苦労をされたようです。ツアー当日に間に合わせることができ、心からホッとした様子の小沢さんから自然と向き合う農家の方のご苦労が伝わってきました。
ハウスでは様々な大きさの赤い苺のほか、まだ緑の苺が実り、甘い香りが漂っています。苺は太陽の方向に向いて実っており、大きな葉に覆われているため角度によっては見えづらく、見つけた時の喜びが一層大きいものになります。今回、特別に数量限定で摘み取り体験もさせていただきました。今年は生育が遅く、人工のライトなどを使ってようやく色をつけてくれたそうです。赤々と実った苺はまるで宝石のよう。これまで食べた苺よりも、味が濃く、香り豊かな苺に感動です。テーブルにも持っていけるよう紙コップが配られました。この紙コップをどうやって多くの苺で埋めるか、、、、思案を巡らせました。
苺の摘み取り体験の後、小沢さんの一番弟子である苺農家『いちご家族』の太田さんが他の苺ハウスや農地周辺の散策ツアーの案内をしてくれました。ハウスの形や方向など様々な工夫についてお話を聞きながら、気が付いたのは、おざわ農園さんの苺は葉っぱが青々として、大きく力強いこと。葉が大きいことでたくさん光合成して栄養を苺に送り込んでくれるそうです。苺の観察の仕方や栽培の秘訣を聞いているとおざわ農園さんの苺のおいしさと人気の秘密が見えてきます。 ハウスには受粉という重要な仕事をしている蜂たちが飛んでいます。 普段は少し怖いと感じてしまう蜂たちも健気に働いている様子が愛おしくなります。また蜂たちも忙しそうで、見学者のことは気にもとめずに一生懸命働いています。
最初に出てきたお料理は《苺のパンコントマテ》スペインのカタルーニャ地方のパンにトマトを染み込ませたお料理ですが、今回はもちろん苺。ブリオッシュと苺の甘みと生ハムの塩気の組み合わせが最高に美味しい一品でした。次のお料理は苺と海老のサラダですが、出てきたものはサラダと呼ぶには美しすぎる1品でした。 お米でできた小さなカゴを崩すと、アーモンド豆腐ソースに和えた苺、海老、ゴルゴンゾーラなどのチーズのサラダが出てきます。これらがキッチンカーで準備されているわけですから、繊細なお料理がさらに演出力を増します。 郡山の名店『ベストテーブル』の芹沢シェフはこの時のために1ヶ月もの間、レシピの考案と試作品を作ったそうです。
お魚料理は熟した苺と熟す前の青い苺を使ったサルサソースの真鱈のポワレです。苺の酸味と甘みと青い苺のフレッシュな香りが食欲をそそります。多国籍料理を提供するベストテーブルならではのメニューかもしれません。お肉料理の豚の包み焼きのソースには苺とバルサミコ酢が使われていました。このソース以外には考えらえないほど、お肉にソースがマッチしています。 最後のお食事はなんと苺とずわい蟹のちらし寿司!少しピリッと辛い特製のソースをかけていただきました。蟹とお米にトッピングされたココナッツミルクフォームと苺。一見バラバラのように思える食材たちが口の中で融合し、それぞれの旨味を引き出し合います。 デザートは生の苺、苺のアイスの酸味とチョコレートが絶妙なバランスの甘酸っぱさを作り出すパフェ。しかもトリックのようにブリュレで蓋をされた最高においしくて見たもにも楽しい一品でした!おいしすぎて参加者の中には「ぜひ今後、お店で出してください」と懇願する人がいるほどでした。 食後のコーヒーをいただき、あっという間の時間。最後に自宅用と実家用に苺を注文しました。このおいしさを独り占めしてはいけないと思ってしまいました。
小沢さんをはじめ、企画された『孫の手トラベル』の皆様に見送られ、おざわ農園を後にしました。郡山の旅行会社である孫の手トラベルさんは生産者(農場)から消費者(食卓)へ安全で新鮮な食材を提供する考え方である“Farm to Table“を実践し、福島から”おいしい革命”を目指す青空レストラン 【Food Camp】の企画で第7回グッドライフアワード環境大臣賞優秀賞を受賞しています。苺農家さんだけでなく、様々な生産者と私たちをつなぐツアー企画は参加者だけでなく、生産者さんと企画した皆さんの笑顔があふれていました。 つくり手の想いを直接聞いて、食材を楽しむことができ、参加者の声がその場でつくり手にフィードバックされるというこの【Food Camp】という企画にこれからも期待が高まります。