今回は秋保温泉の中でも小高い丘に位置する「篝火の湯 緑水亭」さんへの宿泊、そして「秋保ワイナリー」さんでのワインセミナーを体験しました。
出発前から、大阪出身の筆者は、秋保温泉どころか仙台さえも初訪問。未知の旅にワクワク。
今は山梨在住ですが、(移住以来ずっと授乳期だったりで)ワインは初心者なので、今回ワイナリーさんを訪れて学べるのがとっても楽しみでした。
初めての東北新幹線にテンションUP♡東京を出た「やまびこ」は、あっという間に仙台駅のホームへ。
仙台駅からバスに揺られること30分、都市の光景からうって代わり、豊かな山々に抱かれた谷間の「秋保温泉郷」に到着。
秋保温泉は、兵庫県の有馬、愛媛県の道後とならぶ日本三大御湯(皇室の御料温泉)のひとつ。開湯1400年の古い歴史を誇る温泉地で、現在も仙台から30分で行ける奥座敷として愛されています。
「覗橋」バス停を降りると、まず目に飛び込んでくるのは、切り立った岸壁と、その間を流れる、見るからに冷たかろう清流。名取川が秋保石を侵食してできた奇岩の渓谷、「磊々峡(らいらいきょう)」です。
チェックインにはまだ少し早かったので、秋保温泉街に沿って整備された遊歩道を散策しながら、自然の造形美を堪能。西に傾いた日差しが、岩肌を照らしています。
川に流れ込む滝は所々、ダイナミックな氷瀑となっていて、冬ならではの景色に感動!
寒さも忘れて夢中でシャッターを切ってたけど、気がついたら指先がかちかち。
ふと、川に流れ込む支流に湯けむりが立ち上り、ここが温泉街だったことにホッとしたり。
東北の冬の美しさ・厳しさを五感いっぱいに味わったのち、お宿にチェックイン。
お世話になったのは、自家源泉の湯宿「篝火の湯 緑水亭」さんです。
一息入れたら、何はともあれ体を温めるべく、お風呂へ。
森に囲まれた露天風呂「篝火の湯」は、その野趣を存分に味わうため、あえて建物から離して建てられたそう。内湯を出たら、専用のタオルを巻いて、キンと冷えた空気の屋外を歩くのも冬の滋味。
日が傾くと、篝火が灯され、あたりは幻想的な雰囲気に。
自家源泉のお湯は、これまでに巡った温泉の中でもトップクラスの泉質。とろんとまろやかなお湯は、冷えた体を芯からリラックスさせてくれました。
すっかり心も体もゆるんで、暮れゆく空の残照をまったり眺めながら、夕食の席へ。
今回の旅のテーマが「東北・美酒と食のテロワージュ」ということで、楽しみにしていたこの瞬間に、心も高鳴ります。
細やかで美しく、そして優しい味わいでありながら一つ一つの食材の個性がはっきりと伝わる食のアートが、次々に運ばれてきました。
地の旬菜に、三陸で水揚げされた海鮮、ブランド牛「仙台牛」のフィレステーキなど、宮城を中心に東北各地から厳選された素材が、丹精込めて調理され、食感や色、盛り付けで五感をフルに楽しませてくれます。
和食の道、40年という料理長・安彦さん。お料理から感じた丁寧さも優しさも、この笑顔に通じていたのですね。
緑水亭オリジナルビール「篝火」をはじめ、明日訪問予定の「秋保ワイナリー」のワインも揃い、まさに「美酒と食」のマリアージュをゆっくりと堪能することができました。
食後はお庭を眺められるロビーラウンジでほっこり、夜の時間を楽しむ。
翌朝、お部屋のカーテンを開けると、空いっぱいの朝焼け。
秋保温泉で一番の高台にある「緑水亭」ならではの絶景です。
チェックアウト後は、秋保温泉街から歩いても行ける「秋保ワイナリー」へ。
ソムリエールによるお話・見学のほかテイスティングもできる「ワインセミナー」に、いよいよ参加します!
約1時間のプログラムの中で、醸造所やぶどう畑を見せてもらったり、ワイン作りにかける思い、地域食材とのマリアージュなど、楽しくワインの知識を深められます。
分かりやすく、温かな口調でお話してくれるソムリエの横山奈美さん。ワインのことを「この子」と呼んでいて、単なる「製品」ではない、ワインへの愛と真剣さが伝わってきました。
震災復興・地域産業活性化のミッションを掲げ、2015年に設立された秋保ワイナリー。もともと資材置き場・たばこ畑だった場所を一から開墾して、ぶどうを植えることから始めたとか。
名取川を挟んだ谷を、風が抜ける秋保。風を通す方向に、ずらりと畝が並んでいる。こうして湿気を飛ばすことが、ぶどうを病気から守るのに大切とのこと。
同じ品種のぶどうを同じ地域で育てても、土や、ちょっとした条件の違いでぶどうの育ちも、ワインの味も違ってくるそう。海辺で育てられたぶどうは、ほんのり塩気を感じたり。
「秋保石」でも有名な秋保の土は、その石の力が溶け込んで、どんな味を作り出すか。
毎年、試行錯誤を重ね、現在は13種類のぶどうを育てています。
自然はすぐには答えをくれません。地道に細かなテストを繰り返し、より良いものを生み出していこうとする秋保ワイナリーの挑戦。
ワインの味も進化を続け、近年はコンクール受賞も多数。
ワイナリーを見学した後は、3種のワインと、3種のマリアージュフードがサーブされ、実際にテイスティング。
スイーツと合わせたいワインや、醤油・出汁に合うワイン。実際に口に含んでみると、そのマリアージュに心底納得!
地元野菜や調味料、お肉、海産物…どの食材にも作り手との関係や物語があり、それぞれシンプルな料理なのに、相性の良いワインと一緒になることでこんなにも奥深い喜びがあるのかと、改めて「マリアージュ」という言葉を噛みしめます。
それが新たな好奇心を刺激して、聞きたいこともどんどんわいて。グラス3杯ともが開く頃には、心なしか饒舌すぎる受講生だったかもしれません(笑)。
聴くほどにワインへの理解や好奇心が深まり、発見に満ちたテイスティング体験でした。
「地域の人、食、風景、文化が織りなす物語の中で、ワインと食の、日本ならではの合わせ方を提案したい」と横山さん。
食やお酒に込められたつくり手の想い、素材のストーリーに耳を傾けながら、その土地のいのちのエネルギーを頂く。これ以上の贅沢って、思いつきません。
そんな幸せを家族にも伝えたくて、ショップでワインや宮城グルメをたくさん買い込んで、重すぎるリュックと共に、秋保を後にしました、とさ。
カフェも併設されたおしゃれな店内で試飲、軽食もオーダー可能