体が芯から冷えて、外に出るのも嫌になる冬の時期は、お燗酒でほっこり&ぬくぬくしたいもの。
夏は「冷酒」、 冬は「燗酒」と幅広い温度帯で楽しむことができるのが日本酒の醍醐味!世界に誇る日本の伝統文化ですね。今回は、燗酒の楽しみ方をご紹介します。
お燗が文献で最初に登場するのは平安時代。当時の年中行事や制度などを集大成した『延喜式』の中で“炭でお酒を温めるために使用していた”という趣旨の「暖酒料炭一斛」という記載があることや、お酒を温めた道具「土熬堝(どこうか)」が記録されています。 江戸時代には居酒屋が増え、庶民の間で燗酒が大ブーム、一気にポピュラーなものになりました。その背景には、お酒を温める技術が向上したことで、より美味しく燗酒を楽しめるようになったことと、“お燗酒=おもてなし”という考え方が浸透したことが挙げられます。“温める”というひと手間を加えた燗酒が“手間暇をかけてもてなすお酒”という証になったのです。
それでは、美味しい燗酒の飲み方をご紹介していきますね。
1.燗酒はカラダにやさしい飲み方!?
文化として根付いてきた燗酒ですが、お好みの温度に温めて飲む燗酒はカラダにも優しいってご存知でしたか?アルコールは体内に近い温度で吸収されるので、冷酒だと“酔い”を感じるまでに時間差が生じます。飲んでからのタイムラグがあるため、気がついたらぐでんぐでんに…という経験をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか?
燗酒ならスムーズに吸収されるため、カラダへの負担も少なく、酔い具合もわかるので、その日の調子を確認しながらお酒を楽しむことができます。また日本酒にはアミノ酸や有機酸など100数類もの栄養成分が含まれており、この働きにより美肌効果が期待できます。女性にもおススメの飲み方ですよね!
2.温度帯によって日本酒の呼び方が変わる!?
他のお酒と比べ、幅広い温度帯で楽しむことができるのが日本酒の醍醐味だと触れましたが、実は温度帯によって呼び名がつけられていることをご存じでしょうか?
〔冷〕 5℃ :雪冷え
10℃ :花冷え
15℃ :涼冷え
〔燗〕 30℃ :日向燗
35℃ :人肌燗
40℃ :ぬる燗
45℃ :上燗
50℃ :熱燗
55℃ :飛び切り燗
5℃刻みに、わずかな温度の違いにも名前を付けるという所に、日本人らしい情緒と繊細さを感じますよね。全てを覚えるのは大変ですが、自分好みの温度帯と呼び名を覚えてみてはいかがでしょうか。
3.燗酒に合う日本酒とは!?
温めることで味わいが一層深まり、旨味が増すお酒のことを「燗あがりする」「燗映えする」と表現します。醸造の仕方や味わいによっては、お燗をおススメしないものもありますが、一般的にお燗にして美味しいお酒は、“旨みや酸味が多く、味のしっかりしたボディの強い” お酒。純米酒系や生酛・山廃などが向いており、日本酒の旨みや米由来の甘味を一番感じられる40℃前後に温めるのがおススメです。50℃以上になるとアルコール感が強まり、ピリピリとした辛さを感じるようになります。
ということで、今宵のワタクシは…地元宮城県を代表するお酒の一つ、「一ノ蔵 無鑑査 本醸造 辛口」を「ぬる燗」で♡
株式会社 一ノ蔵は、宮城県大崎市に本社を置く日本酒の蔵元で、宮城県の伝統的な手づくりの地酒を醸造しています。「無鑑査」は一ノ蔵のロングセラー商品ですが、実はこの「無鑑査」には有名な逸話があります。
日本酒にはかって級別制度というものが存在し、清酒メーカーが希望するお酒を政府が監査し、特級・一級・二級などの級別を決定していました。但し「特級」を名乗るためには、他の級より高い税金を払う必要があり、酒蔵として良い酒をお求めやすい価格で提供したいと考えても、税金の兼ね合いで販売価格が高くなってしまうというジレンマを抱えていきました。
一ノ蔵はあえて審査を受けない良質な二級酒を「一ノ蔵 無鑑査」として発売。国の監査ではなく、お客さま自身に評価して頂くことで、本当の意味での美味しい日本酒とは何か、業界に一石を投じる商品となり、以降 晩酌酒として全国に多くファンがいます。
温度を変えるだけで違った味わいが楽しめる燗酒…実に奥が深いですね。温めることでリラックス効果があり、心もカラダもほっこり(^^) その日の気分や体調によって、いろいろな温度帯を楽しんでみてくださいね。
◆プロフィール
早坂 久美(はやさか くみ)/プランニングルーム エムピー
大手印刷会社にて、15年間食品をメインにした企画業務に携わり、2001年フリーに。食プランニングのスキルをベースに、フードコーディネーターと唎き酒師、日本酒学講師の資格を生かした活動をしています。
フードプランナー(宮城県6次産業化プランナー登録)/唎き酒師・日本酒学講師(SSI認定No.161)/フードコーディネーター3級/みやぎグリーン・ツーリズムアドバイザー
※活動内容の詳細はこちらから
http://mp-room.com/