WINE

ほっこり心和むうさぎの宿の美味なおもてなし

はたごの心橋本屋

 

蔵王連峰を望む麓に室町時代からの歴史を刻むかみのやま温泉。江戸時代には上山城の城下町として、また羽州街道の宿場町として栄え、東山温泉(福島県会津若松市)、湯野浜温泉(山形県鶴岡市)とともに奥州三楽湯として知られました。
温泉地、城下町、宿場町という全国的にも珍しい町の歴史を背景に豊かな食文化が育まれ、そばやこんにゃく、米沢牛も古い歴史があります。夏は暑く、冬は降雪の多いメリハリのある気候で、盆地を生かした果樹栽培も盛ん。特に良質なぶどうからつくられるワインは100年近い歴史とともに上山地区だけで8つのワイナリーがあり、地元食材とのテロワージュ体験にも期待が高まります。

個室ダイニングでプライベートなくつろぎを

かみのやま温泉は、温泉発祥の地の湯町や、温泉旅館の並ぶ新湯など風情の異なる6つの地区に分かれています。町の南西部の高台に位置する葉山温泉は、昭和初期開湯の比較的新しい温泉。うさぎのモチーフが目印の「はたごの心 橋本屋」は、初代が温泉掘削し、昭和23年に開業しました。客室16部屋ほどの小さな宿で、さりげなく飾られた季節の花や庄内箪笥などの古民具、着物の帯を生かした和モダンなインテリアがおしゃれで落ち着いた雰囲気。中でも目を引くのがあちこちに飾られたうさぎの人形やグッズの数々です。

はたごの心橋本屋

可愛らしさに心が和む。館内の「うさぎ探し」を楽しむお客様も

「うさぎの人形やグッズは15年ほど前に亡くなった大女将(祖母)の干支がうさぎだったこともあってコレクションしていたもの。あちこちに飾ったところ、若い女性客をはじめお客様が増えたんです。大女将が好きだった縁起物のうさぎが今も人を呼んでくれているんですね」と話すのは若女将の橋本花紀さん。大学を卒業した2年前から実家の橋本屋に入り、結婚・出産を経て育児と両立させながら仕事に励んでいます。「子どもの頃から大女将や女将(母)の姿を見て育ちましたが、勉強することは多く、少しでも早く仕事を身に着けたいと思っています。子育ても仕事も楽しんでいます」とはじけるような笑顔です。

はたごの心橋本屋

「お客様が帰った後、冬にはよく露天風呂に雪うさぎが作ってあるんです。なんだかうれしいですね」と若女将の橋本花紀さん

橋本屋では、「小さい宿ながらの丁寧で温かなおもてなし」がモットー。スタンダードな客室のほかに、趣の異なる露天風呂付客室や、すべてのプランで利用できる個室ダイニングなどプライベートなくつろぎを大事にしています。「20年ほど前から取り入れているスタイルで、常連のお客様はもちろん、コロナ下でも安心してくつろげると多くの方に足を運んでいただきました」

食の王国・山形。旬の料理と楽しむ地酒&ワイン

はたごの心橋本屋

山形、上山の旬の食材を使った繊細な日本料理を堪能できる(夕食一例)

こちらで楽しめるのは、山形ならではの食材を生かした繊細な日本料理。庄内の港から届く日本海の海の幸や、米沢牛・山形牛といったブランド牛など華やかな食材も人気ですが、新鮮な野菜や山菜、お米の美味しさに感激されるお客様も多いそう。

橋本屋のすぐ裏山でコシアブラやタケノコ、栗など山のものがふんだんに取れ、自社のわらび園で取れるわらび料理もあります。こんにゃくやそばも上山らしさの伝わる食材です。

「山形は季節ごとに美味しいものが豊富。食材からのインスピレーションでメニューを考えています。食材を生かしたバリエーションを出していけるよう、調理場の若いスタッフともアイデアを出し合っています」と話すのは料理長の奥山宗法さん。庄内町出身で、箱根(神奈川県)や山形蔵王の旅館を経て橋本屋に入り、3年前に料理長を受け継ぎました。

はたごの心橋本屋

女将さんからは、器などの色使いを教えてもらっているとのこと。「長年男性の親方のもとで修行してきたので、女性ならではの感性にはっとすることが多いですね」。小皿を篭盛にしたり、野菜をうさぎの型抜きにしたり。目で喜んでもらう工夫も心掛けているそうです。

はたごの心橋本屋

オリジナルの純米吟醸「花うさぎ」。桃色の瓶はほんのり甘口、水色は辛口。きりっと冷やして提供する

お酒好きにはたまらない全国的な銘酒ぞろい

米どころでもある山形県内には54の日本酒蔵があり、全国旬酒鑑評会の金賞受賞数では常に上位。宿の料理のお供に高品質な地酒をと、楽しみにしてくる人のために厳選した日本酒を揃えています。橋本屋オリジナルの純米吟醸「花うさぎ」(後藤酒造店/東置賜郡高畠町)も人気。凍らせた竹筒に入れて提供する「竹筒氷結酒」もあり、日常とは違った雰囲気を楽しめる演出にも心躍ります。

また、寒暖差の激しい気候と水はけのよい土壌、盆地を生かしたぶどう栽培から、ワインづくりの歴史も古いのですが、この数年は生産者、醸造家も増えています。

山形の老舗で100年の歴史のある「タケダワイナリー」は全国的にもファンが多いワイナリー。「ルージュ」(赤ワイン)は、米沢牛のヒレステーキと合わせたいとオーダーする人も多いとか。果実の香り豊かでキレのある酸味、タンニンが滑らかな軽めの赤は、旨味がありながらあっさりした味わいのヒレ肉にぴったり。そもそも牛ステーキと赤ワインは相性がいいですが、地元の極上ペアリングを贅沢に楽しめます。

はたごの心橋本屋

「タケダワイナリー・ルージュ」は山形産マスカットベーリーAを使ったぶどう味溢れる味わい

上山の風土を感じる立ち寄りスポット

「上山の朝の空気が好き」と外に目をみやりながら若女将は微笑みます。「近くの花咲山を登る30分くらいのウオーキングコースがあります。蔵王や町を一望できる頂上には、『幸の鐘』があるんですよ。帰ってきたら、お風呂に入って朝ごはんというのがオススメです」。

澄んだ空気の自然の中で体を動かしたら、空腹は最高の調味料に。風土を五感で感じながら、温かなおもてなしにリフレッシュできます。

料理のお供にご紹介した1920年創業の老舗ワイナリー・タケダワイナリー(上山市四ツ谷2-6-1/℡023-672-0040)は、東京ドーム2.5個分(15ヘクタール)の自社農園で自然農法によるぶどう栽培、醸造を行っています。見学・試飲は当面の間休止ですが、直売所(10時~17時)でワインの購入もできます。

温泉ついでに楽しめるちょっとユニークな体験プランは、東北芸術工科大学の学生が企画した「かみのやまピクニックランチセット」。ランチとコーヒー、敷物などが入ったバスケットを持って、好きな場所でおしゃれピクニックを楽しめるプラン(12500円/2日前まで予約)です。桜の季節には月岡公園がオススメ。詳しくはかみのやま温泉観光案内所(℡023-672-0839)へ。

はたごの心橋本屋

基本情報
施設名
かみのやま温泉 はたごの心 橋本屋
所在地
山形県上山市葉山4-15
電話番号
023-672-0295
料金(目安)
23,100~
客室数
16
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